セルフホワイトニングサロンで医療機器は使える?薬機法・歯科医師法から見るできること

「セルフホワイトニングサロンで医療機器は使える?」のタイトル画像 トラブル・規制関連

セルフホワイトニングサロンが法令の範囲で運営できるかどうかは、「使う機器や材料が何にあたるか」と「誰が何をするか」の二つで決まります。この記事では、サロンを運営している、または開業を考えている事業者に向けて、薬機法・歯科医師法・歯科衛生士法と厚生労働省の公表資料をもとに、サロンでできること・できないこと、判断に迷う点の確かめ方を整理します。個別の判断は、保健所や都道府県の薬務担当課、専門家に確認してください。

まず押さえたい三つの法律

法律主に関わる点サロンで意識すること
歯科医師法第17条で、歯科医師でなければ歯科医業をしてはならないと定めるスタッフが歯や口の中に処置をする、診断するといった行為をしない
歯科衛生士法歯石などの機械的除去や歯への薬物の塗布などの予防処置は、歯科衛生士の業務(第2条・第13条)スタッフが歯面清掃やジェルの塗布をしない
薬機法(医薬品医療機器等法)医療機器・医薬品・医薬部外品・化粧品の区分、販売や貸与の手続き、広告の規制機器・材料の区分を確認し、区分に合わない効能を広告しない

セルフホワイトニングは、利用者が自分でジェルを塗り、自分で照射器を操作する形をとることで、これらの法律が定める医療行為や歯科衛生士の業務にあたらないよう組み立てられたサービスです。逆に言えば、この前提が崩れる運営をすると、法令上の問題が生じるおそれがあります。

過酸化物を含むホワイトニング材の扱い(厚生労働省の回答)

厚生労働省は2025年4月18日、新事業活動に関する確認の求めに対する回答を公表しました。照会は、歯科医院で歯科医師が診察し、過酸化水素入りのジェルを使ってよいと判断した患者にジェルを渡し、患者が同じ施設内のセルフスペースで自分で塗布・照射するという事業についてのものです。

回答の要点は次のとおりです。

  • 照会で示された過酸化水素を含むホワイトニング材は、歯に使い、歯科学的な配慮が必要な医療機器である。
  • 歯科医師が診察のうえ、その患者に過酸化水素の使用が適当かを判断して渡すのであれば、療養の向上を目的とした交付にあたると考えられる。
  • 歯科医業にあたる可能性のある行為でも、一般論として、自分の体に対して自分で行う場合は歯科医師法第17条に違反しないと考えられる。
  • ただし、その製品の添付文書に書かれた使用方法と事業の内容に違いがあるため、添付文書に従って適切に使うよう注意すること。

この回答から分かるのは、過酸化物を含むホワイトニング材を使うかどうかは歯科医師が患者ごとに判断するものだという点です。歯科医師の診察を経ずに、サロンが自らの判断で同種の材料を用意し、来店客に使わせる運営は、この回答が前提とする形とは異なります。

サロンでできること・できないこと

行為サロンでの扱い理由・注意点
利用者が自分でジェルを塗り、照射器を操作するできるセルフホワイトニングの前提となる形。使うジェルと照射器の区分は事前に確認する
スタッフが手順・注意点を口頭や見本で説明するできる説明にとどめ、利用者の口の中には触れない
スタッフが利用者の歯にジェルを塗るできない歯への薬物の塗布は歯科衛生士の業務にあたるおそれがある
スタッフが歯石や汚れを器具で取るできない歯石などの機械的除去は歯科衛生士の業務
スタッフが虫歯・歯周病の有無や原因を判断して伝えるできない診断は歯科医師の領域。気になる症状があれば歯科の受診を勧める
過酸化物を含む歯科用ホワイトニング材を、サロンの判断で来店客に使わせるしない医療機器であり、使用の可否は歯科医師が判断するもの(厚生労働省の回答)
医療機器である照射器を、サロンが販売・貸与する手続きが必要クラスに応じて販売業・貸与業の許可や届出が必要になる

照射器や機器が医療機器にあたるかの確かめ方

医療機器は、リスクに応じて一般医療機器(クラスⅠ)、管理医療機器(クラスⅡ)、高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)に分けられています。都道府県の案内では、医療機器を販売・貸与する場合、高度管理医療機器は営業所ごとの許可、管理医療機器は事前の届出が必要とされ、特定保守管理医療機器はクラスに関係なく許可が必要とされています。

サロンで使う機器については、次の手順で確認すると確実です。

  1. 仕入れ先・製造元に、その機器が日本の医療機器として承認・認証・届出されているか、されている場合はクラスと一般的名称を書面で確認する。
  2. 医療機器である場合は、サロンでの使い方が添付文書の使用目的・使用方法に合っているか、販売・貸与の手続きを誰が取っているかを確認する。
  3. 医療機器かどうか判断できない場合は、都道府県の薬務担当課に相談する。

海外では医療機器や美容機器として扱われている製品でも、日本での区分は別に判断されます。輸入品を使う場合は特に、日本での位置づけを確かめてから導入してください。

広告・説明で気をつけること

薬機法は、医薬品・医療機器などについて、虚偽・誇大な広告を禁じています。またサロンの広告は、景品表示法の不当表示の規制も受けます。セルフホワイトニングで使うジェルや照射器が医療機器でない場合、医療機器であるかのような表現や、歯を漂白する効果をうたう表現は、利用者に誤解を与えるおそれがあります。

  • 避けたい表現の例:「歯科医院と同じ効果」「1回で真っ白」「〇トーン白くなる」「医療機器を使用」(実際に該当しない場合)
  • 説明の軸:歯の表面の着色汚れのケアであること、歯そのものの色を変えるものではないこと、感じ方に個人差があること
  • 症状への対応:痛みや知覚過敏、虫歯・歯周病が気になる人には歯科の受診を勧める

「何ができないか」を先に伝えることは、期待とのずれによる不満や解約トラブルを防ぐことにもつながります。

違反した場合の責任

歯科医師法・歯科衛生士法・薬機法には、それぞれ罰則が定められています。なお刑法等の改正により、2025年6月1日から懲役と禁錮は「拘禁刑」に改められました。罰則の具体的な内容は、最新の条文をe-Gov法令検索などで確認してください。

刑事上の責任とは別に、利用者に健康上の被害が生じた場合には、民事上の損害賠償を求められることもあります。行政の指導を受けた事実が知られれば、店舗やブランドの信用にも影響します。法令の範囲を守ることは、利用者の安全と事業を守ることでもあります。

スタッフ教育で決めておきたいこと

法令上の線引きは、現場のスタッフが日々の接客で守れて初めて意味を持ちます。忙しい時間帯や、利用者から頼まれた場面でも迷わないよう、具体的な言い方まで決めておくと安心です。

場面してはいけないこと代わりの対応の例
ジェルがうまく塗れないと言われたスタッフが代わりに塗る鏡の位置を直す、見本や模型で塗り方をもう一度見せる
「この黒いのは虫歯ですか」と聞かれた虫歯かどうかを答える「ここでは判断できないので、歯科で診てもらってください」と伝える
しみる・痛いと言われた原因を推測して説明し、続けるよう促す照射を止め、無理に続けないよう伝え、歯科の受診を勧める
「何トーン白くなりますか」と聞かれた数字で効果を約束する表面の着色汚れのケアであり、感じ方に個人差があることを説明する

新しいスタッフが入ったときだけでなく、定期的に同じ内容を確認し、実際の接客で迷った例をマニュアルに追記していくと、店舗ごとの対応のばらつきを抑えられます。

運営を点検するチェックリスト

  • 使っているジェルの成分と製品区分を、仕入れ先の書面で把握しているか
  • 照射器が医療機器にあたるか、あたる場合のクラスと手続きを確認しているか
  • マニュアルに「スタッフは口の中に触れない」「ジェルを塗らない」「診断しない」が明記され、研修で徹底されているか
  • ホームページ、予約サイト、SNS、店頭POPで、漂白や効果の断定にあたる表現を使っていないか
  • 同意書や事前説明で、医療ではないこと、ケアできる範囲、症状がある場合は歯科を受診することを伝えているか
  • 体調不良や痛みを訴えられたときの対応手順(施術の中止、歯科受診の案内)を決めているか

よくある質問

Q. サロンで過酸化水素を含むジェルを使うことはできますか?

A. 過酸化水素を含む歯科用のホワイトニング材は医療機器として扱われ、使うかどうかは歯科医師が患者ごとに判断するものです(厚生労働省の2025年4月の回答)。サロンが独自の判断で来店客に使わせる運営は避けてください。

Q. 歯科医師の診察を受けた人が、処方されたジェルを自分で使うのは問題ありませんか?

A. 厚生労働省の回答は、歯科医師が診察して使用が適当と判断した患者に交付し、患者が自分の歯に使う場合について、一般論として歯科医師法に違反しないと考えられるとしています。ただし製品の添付文書に従った使い方が求められ、個別の事業の形が問題ないかは別途確認が必要です。

Q. スタッフが手順をやって見せるのは問題ですか?

A. 見本や模型、口頭で手順を説明することは一般的に行われています。利用者の口の中に触れる、ジェルを塗る、器具で汚れを取るといった行為はしないでください。

Q. 使っている照射器が医療機器かどうか分かりません。

A. 仕入れ先・製造元に、日本での医療機器としての承認・認証・届出の有無とクラスを書面で確認してください。判断できない場合は、都道府県の薬務担当課に相談できます。

Q. 罰則の内容はどこで確認できますか?

A. 各法律の罰則規定を、e-Gov法令検索などで最新の条文にあたって確認してください。2025年6月1日から懲役・禁錮が拘禁刑に改められているため、古い資料の記載には注意が必要です。

参考資料

執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年10月29日