フランチャイズ契約で加盟後の負担が最も大きく変わるのは、契約が終わるときの条件です。具体的には、中途解約できるか、違約金はいくらか、契約終了後に同じ業種の営業をどこまで制限されるか、の三つです。この記事では、セルフホワイトニングサロンのフランチャイズ加盟を検討している人に向けて、中小企業庁・公正取引委員会の資料をもとに、署名前に確認したい条項と、解約時の金額を自分で計算する方法を整理します。
契約は「終わり方」から読む
加盟の検討では、開業までの費用や売上の見込みに目が向きがちです。しかし、事業が計画どおりに進まなかったとき、体調や家庭の事情で続けられなくなったときに何が起きるかを決めているのは、契約の期間・更新・解除・違約金・競業避止の条項です。
中小小売商業振興法第11条は、一定の要件にあたるフランチャイズ(特定連鎖化事業)の本部に対し、契約前に書面を交付して説明することを義務づけており、その記載事項に「契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項」が含まれています。中小企業庁の資料では、省令で定める記載事項として、次のような項目が挙げられています。
- 契約の期間、更新の条件と手続き、解除の要件と手続き、解除に伴う損害賠償金の額または算定方法
- 契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他の義務の内容
- 契約終了後に、他のフランチャイズへの加盟や類似の事業への就業などが禁止・制限される規定の有無と内容
- 契約期間中・終了後に、事業について知り得た情報の開示を禁止・制限する規定の有無と内容
- 加盟時に払う加盟金・保証金などの返還の有無と条件
同法の義務の対象は主に小売業(飲食を含む)を営む加盟者を想定したもので、サービス業であるセルフホワイトニングのフランチャイズが対象になるかは個別に判断されます。ただ中小企業庁は、要件にあたらない場合でも重要な事項は事前に開示することが望ましいとしています。対象かどうかにかかわらず、上の項目を書面で出してもらい、契約書の該当条項と突き合わせるのが確実です。書面の全体の読み方はフランチャイズ加盟前に確認することで解説しています。
契約期間・更新・解除の条項で確認すること
| 条項 | 確認すること |
|---|---|
| 契約期間 | 何年か。期間の起算日は契約日か開業日か。開業が遅れた場合に期間が短くならないか |
| 更新 | 自動更新か、合意による更新か。更新料の有無と金額。本部が更新を拒める条件 |
| 加盟者からの中途解約 | そもそも中途解約できるか。予告期間(何か月前までに通知するか)と通知の方法 |
| 本部からの解除 | どんな事由で解除されるか(支払いの遅れ、売上の未報告、ブランドの基準違反など)。是正の猶予期間(催告)があるか |
| 解除時の金銭 | 違約金・損害賠償の額または計算式。加盟者の都合による解約と、契約違反による解除で金額が違うか |
| 加盟金・保証金 | 開業前に解約した場合、開業できなかった場合、契約終了時に返還されるか。保証金から差し引かれるものは何か |
| 終了後の義務 | 看板・ロゴの撤去、マニュアルの返却、顧客情報の扱い、競業避止、守秘義務 |
中小企業庁の資料は、どのような解約にいくらの違約金を支払うことになるのか、どのような契約違反にどのようなペナルティが課されるのかを十分に確認するよう呼びかけています。また、店舗が開店できなかった場合に加盟金などが返還されるかどうかも確認点として挙げています。物件が決まる前に加盟契約を結ぶ場合は、特に重要です。
中途解約と違約金の確認点
公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(フランチャイズ・ガイドライン)は、加盟者の募集段階で開示が望ましい事項に、契約の期間と、更新・解除・中途解約の条件・手続きを挙げています。中途解約の条件が不明確だと、加盟希望者の適正な判断が妨げられるとも述べています。
さらに同ガイドラインは、不当な勧誘(ぎまん的顧客誘引)にあたるかの判断要素の一つとして、中途解約の際に実際には高額な違約金を徴収されることについて十分に開示しているかを挙げています。契約後の取引についても、加盟者に解約権を与えていないか、解約の場合に高額の違約金を課していないか、契約期間が加盟者の投資を回収するのに見合っているかが、全体として判断する際の考慮要素とされています。
これらは個別の契約条項が有効か無効かを自動的に決めるものではありません。ただ、説明会で違約金について質問したときに、計算式と具体的な金額例を書面で示してもらえるかどうかは、本部の説明姿勢を見る目安になります。
違約金の計算式の主な型
- 残存期間型:月額のロイヤルティなど×契約の残り月数。解約が早いほど高くなる
- 定額・月数固定型:一律○万円、または月額のロイヤルティ×○か月分
- 実損型:本部に生じた損害を個別に計算する。上限の有無を確認する
- 組み合わせ型:上記に加えて、未償却の研修費・販促費などの精算を求める
売上歩合のロイヤルティの場合、「月額」が直近の実績なのか、平均なのか、最低額なのかで計算結果が変わります。式の中の言葉の定義まで確認してください。
試算:解約の時期と金額の関係(仮定)
以下は説明のための仮定の数字で、実際の契約条件を示すものではありません。
- 契約期間5年(60か月)、ロイヤルティは固定で月5万円
- 違約金の条項は2通りを比べる。条項A:月5万円×残りの月数/条項B:月5万円×6か月分(一律)
- LED照射器は本部とは別のリース契約で月3万円、リース期間は加盟契約と同じ60か月。中途解約時は残りのリース料全額を支払うと仮定
- 退店時の原状回復・撤去費用を50万円と仮定
| 解約する時期 | 残りの月数 | 条項Aの違約金 | 条項Bの違約金 | 残りのリース料 | 合計(条項A) | 合計(条項B) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 開業12か月後 | 48か月 | 240万円 | 30万円 | 144万円 | 434万円 | 224万円 |
| 開業24か月後 | 36か月 | 180万円 | 30万円 | 108万円 | 338万円 | 188万円 |
| 開業48か月後 | 12か月 | 60万円 | 30万円 | 36万円 | 146万円 | 116万円 |
計算は、条項A=5万円×残り月数、条項B=5万円×6=30万円、残りのリース料=3万円×残り月数、合計=違約金+残りのリース料+撤去費用50万円です。たとえば開業24か月後に条項Aで解約すると、180万円+108万円+50万円=338万円になります。
この仮定では、早い時期に解約するほど条項Aと条項Bの差が大きくなります。また、違約金だけを比べても、別契約のリースや撤去費用を足すと総額は大きく変わります。実際の契約書で、解約の時期を何通りか置いて同じ表を作ってみてください。物件の解約予告期間中の家賃や、保証金の償却分もここに加わります。
契約終了後の競業避止義務と守秘義務
多くのフランチャイズ契約には、契約が終わった後も一定の地域・期間、同じ種類の事業を営むことを禁じる「競業避止義務」と、知り得た情報を外部に漏らさない「守秘義務」の条項があります。
フランチャイズ・ガイドラインは、取引先や営業地域などの制限について、本部が提供した営業の秘密を守ることや、ブランドの統一イメージを保つことなどが目的と考えられ、その範囲内であれば直ちに問題になるものではないとしています。一方で、本部の商権の維持や提供したノウハウの保護に必要な範囲を超えるような地域・期間・内容の競業禁止を課すことは、優越的地位の濫用にあたるおそれがある例として挙げています。中小企業庁の資料も、契約終了後に競業禁止や秘密保持義務の面でどのような制限がかかるのかを理解しておくことが重要だとしています。
競業避止の条項で確認する点
- 地域:同じ店舗の場所だけか、半径何kmか、市区町村や都道府県単位か
- 期間:契約終了後何年か。解約の理由(加盟者の都合・本部の都合・契約違反)で期間が変わるか
- 内容:禁止されるのはセルフホワイトニングだけか、美容サービス全般か。既存のネイル・エステなどの事業を続けられるか
- 対象者:加盟者本人だけか、家族・役員・従業員まで含むか
- 違反時の金銭:違約金の額、差し止めの定め
すでに別の美容サロンを営んでいて、その一角でセルフホワイトニングを始める場合は、契約終了後に既存のサロンの営業そのものが制限されないかを特に確認してください。
守秘義務と顧客情報の扱い
- 守秘義務の対象(マニュアル、仕入れ価格、システムの仕様など)と期間
- 顧客リストや予約データの帰属。契約終了後に既存のお客様へ連絡できるか
- 店舗の電話番号、SNSアカウント、予約サイト・地図検索のアカウントは誰の名義で、終了後にどう扱うか
契約終了時に顧客情報やアカウントをどう引き継ぐか(または引き渡すか)を条項で確認しておくと、閉店や屋号の変更のときに、お客様への案内がしやすくなります。
解約時に一緒に動く契約(リース・物件・お客様の前払い・保証人)
フランチャイズ契約を解約しても、それに付随する別の契約は自動的には終わりません。解約時の総額は、次の契約もあわせて確認しないと分かりません。
機器のリース契約
照射器などをリースで導入する場合、リース会社との契約は加盟契約とは別になっていることがあります。滋賀県消費生活センターの情報誌でも、リース契約は契約期間内は原則として中途解約できず、解約できる場合も通常は解約金や違約金が生じると説明されています。さらに、営業のために結ぶ契約は特定商取引法の適用除外とされているため(同法第26条)、クーリング・オフなどの消費者向けの保護は受けられない可能性があります。購入とリースの違いはLED照射器の選び方|購入とリースの比較で解説しています。
加盟者は「消費者」として守られない
消費者契約法は「消費者」を、個人のうち事業として、または事業のために契約の当事者となる場合を除いたものと定めています(第2条第1項)。個人が開業のためにフランチャイズ契約を結ぶ場合は、一般に事業者どうしの契約として扱われ、消費者向けのルールで違約金が抑えられることは期待しにくいと考えておくべきです。だからこそ、署名前に条項を読み、必要なら専門家に見てもらうことが重要になります。
物件の契約
本部が物件を借りて加盟者に転貸する形か、加盟者が自分で借りる形かで、解約時の手続きが変わります。解約予告の期間、原状回復の範囲、保証金の償却を確認してください。
お客様の回数券・コースの残り
国民生活センターは2024年7月、セルフホワイトニングを含む「セルフエステ」の相談が増えているとして、契約期間や違約金の有無を確認するよう消費者に呼びかけています。解約・閉店時にお客様の回数券やコースの残りがある場合、返金の義務を負うのは加盟者か本部か、他の店舗で使えるのかを契約で確認しておきましょう。閉店の手順はサロン閉店の手順と注意点にまとめています。
個人の連帯保証
加盟者が法人の場合に、代表者個人や家族が契約上の債務の保証人になるよう求められることがあります。法務省の資料によれば、2020年4月以降、個人が根保証契約(一定の範囲の継続的な債務をまとめて保証する契約)の保証人になる場合は、上限額である「極度額」を定めなければ保証契約は無効とされています。また、事業のための債務の保証を他人に依頼する場合、主たる債務者は財産や収支の状況などの情報を保証人に提供しなければなりません。保証の範囲と極度額を、保証人になる人と一緒に確認してください。
署名前のチェックリストと相談先
| 確認項目 | 手元にそろえるもの |
|---|---|
| 解約時の総額 | 違約金の計算式と、解約時期ごとの金額例(本部に書面で出してもらう) |
| 開業できなかった場合 | 加盟金・保証金・研修費の返還条件 |
| 競業避止 | 地域・期間・内容・対象者が書かれた条項。既存事業への影響 |
| 守秘義務と顧客情報 | 顧客リスト、電話番号、各種アカウントの帰属と終了時の扱い |
| 付随する契約 | リース契約書、物件の賃貸借契約書、保証契約書の中途解約条項 |
| お客様の前払い | 回数券・コースの残りの返金義務を誰が負うか |
| 本部の実績 | 直近3年の契約解除・更新しなかった店舗の数、直近5年の加盟者との訴訟の件数 |
中小企業庁の資料では、日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の会員本部は、加盟希望者に7日間以上の熟慮期間を確保することとされていると紹介されています。署名を急がず、条項に不明な点があれば十分に理解できるまで本部に確認してください。契約書以外の書類に署名・押印を求められた場合も、その書類の性質を確かめてから応じることが勧められています。
契約書の内容が妥当か判断がつかないときは、JFAのフランチャイズ相談センター、中小企業庁、弁護士や商工会議所などに相談できます。違約金の試算表を作ってから相談すると、話が具体的になります。
よくある質問
Q. フランチャイズ契約は途中で解約できますか?
A. 契約書の定めによります。加盟者からの中途解約を認めていない契約や、認めていても違約金がかかる契約があります。予告期間、違約金の計算式、解約時期ごとの金額例を、署名前に書面で確認してください。
Q. 違約金の金額が妥当かどうかはどう判断すればよいですか?
A. 解約の時期を何通りか置いて、違約金・別契約のリースの残り・撤去費用などを足した総額を計算し、手元資金で払えるかを確認します。公正取引委員会のガイドラインは、高額な違約金を十分に開示しないことを不当な勧誘の判断要素に挙げています。判断がつかない場合は弁護士などに相談してください。
Q. 契約終了後もセルフホワイトニングの営業はできますか?
A. 競業避止義務の条項で、地域・期間・内容が制限されていることがあります。同じ場所で別の屋号で続けられるか、既存の美容サロンの営業に影響しないかを、条項の文言で確認してください。
Q. 個人で加盟する場合、消費者として保護されますか?
A. 消費者契約法は、事業として、または事業のために契約する個人を「消費者」から除いています。また、営業のための契約は特定商取引法の適用除外とされています。消費者向けの保護は期待しにくいため、署名前の確認が重要です。
Q. 開業前に解約した場合、加盟金は戻りますか?
A. 返還の有無と条件は契約によって異なります。中小企業庁の資料も、店舗が開店できなかった場合に加盟金などが返還されるかを十分確認するよう呼びかけています。物件が決まる前に契約する場合は特に注意してください。
フランチャイズ加盟を検討するときの関連記事
参考資料
- 中小企業庁「特定連鎖化事業(フランチャイズ)について」
- 中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」(PDF)
- 中小企業庁「フランチャイズ契約を締結する前に」(PDF)
- 衆議院「中小小売商業振興法」(昭和48年法律第101号)制定時の条文
- 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」
- 日本法令外国語訳データベース「消費者契約法」
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」(適用除外)
- 滋賀県「キャッフィーのくらし通信」(リース契約の中途解約)
- 国民生活センター「『セルフエステ』の契約トラブルに注意!」(2024年7月31日)
- 法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」(PDF)
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年10月29日

