結論:通っていたサロンが倒産してサービスを受けられなくなっても、クレジットの請求は自動では止まりません。分割払いやリボ払いなど一定の条件を満たす支払いなら、割賦販売法の「支払停止の抗弁」で、クレジット会社に今後の支払いを止めるよう申し出られる場合があります。まず利用明細で支払方法を確かめ、早めにクレジット会社へ連絡して書面(抗弁書)を出しましょう。
この記事では、サロンの回数券やコース代をクレジットで払っていた人に向けて、支払停止の抗弁が使える条件、申出の手順、書面に書くことと用意するもの、一括払いや口座振替の場合の考え方を、経済産業省・消費者庁・自治体の消費生活センターの公開資料と条文をもとに整理します。ただし、個々の契約で支払いが止まるか、すでに払った分が戻るかは、契約の内容やクレジット会社の判断で変わります。この記事は一般的な仕組みの説明です。
1. サロンが倒産してもクレジットの請求は止まらない
クレジットで支払った場合、契約は二つあります。サロンとの間の「サービスの契約」と、クレジット会社との間の「立替払い(カード利用)の契約」です。鹿児島県の消費生活センターは、この二つは別の契約なので、販売会社が倒産してもクレジット会社に支払う義務は残ると説明しています。奈良県の消費生活センターも、倒産しても引き落としは自動的には止まらないと注意しています。
つまり、何もしなければ、施術を受けられないまま分割の請求が続くことになります。そこで使えるのが、次に説明する「支払停止の抗弁」です。
- まず、カードの利用明細やクレジット契約書で、サロンへの支払いが「どの支払方法で」「あと何回・いくら残っているか」を確かめます。
- 倒産や閉店の告知、サロンからの通知があれば、画面の保存や写真で残しておきます。
閉店直後に確かめることの全体像は、通っていたセルフホワイトニングサロンがなくなったときの対処でも整理しています。
2. 支払停止の抗弁とは
支払停止の抗弁(抗弁の接続とも呼ばれます)は、販売店やサービス事業者との間に生じた問題を理由に、クレジット会社からの請求に対しても支払いを拒めるという仕組みです。経済産業省の説明資料では、販売業者の責任でトラブルが起きた場合、クレジット会社に責任がなくても、消費者はクレジット代金の支払いを拒否できるとされ、根拠条文はカード払い(包括信用購入あっせん)が割賦販売法第30条の4、個別のクレジット契約(個別信用購入あっせん)が第35条の3の19とされています。
サロンが倒産して施術を受けられなくなった場合について、大阪府は「業者の倒産などでサービスが受けられなくなったりした場合」に支払いを拒否できることがあると案内しています。消費者庁も、施術回数が残っていてクレジットの分割払いの途中なら、以降の支払いの停止を求める抗弁を主張できるとしています。
大事なのは、この仕組みでできることの範囲です。
| できること | できないこと・注意点 |
|---|---|
| これから請求される分(未払いの分)の支払いを止めるよう、クレジット会社に主張する | すでに支払った分の返還を求めるものではない(消費者庁・鹿児島県・奈良県) |
| 問題が解決するまで請求を止めてもらう | 契約そのものがなくなるわけではない。支払停止は一時的な措置で、その後の扱いは話し合いになる(大阪府・杉並区) |
| 倒産した事業者の代わりに、クレジット会社と今後の扱いを話し合う | 申し出た後の対応はクレジット会社ごとの判断になる(文京区) |
なお、2008年の法改正で、対象の商品・役務を限定する「指定商品・指定役務制」は撤廃されています(経済産業省資料)。そのため、サロンのサービスが特定商取引法の「エステティック」に当たるかどうかとは別に、支払方法などの条件を満たせば抗弁の対象になり得ます。
3. 支払停止の抗弁を使える条件
条文と施行令で確認できる主な条件は、支払方法と金額です。
| 支払方法 | 対象になるか | 確認するところ |
|---|---|---|
| カードの分割払い(3回以上など) | 対象になり得る。ただし支払総額が4万円に満たないものは適用されない(施行令第21条第1項) | 利用明細の支払方法と支払総額 |
| カードのリボ払い | 対象になり得る。金額の基準は3万8千円(施行令第21条第2項) | そのサロンへの利用額、リボの残高 |
| 2回払い・ボーナス一括払いなど、2か月を超えて支払うもの | 経済産業省資料では、2か月を超える1回払い・2回払いも規制の対象とされている | 購入日から支払日までの期間 |
| 翌月一括払いなど、2か月以内に1回で払うもの | 割賦販売法の対象外となるのが一般的(第2条第3項で、2か月以内に支払うものは除かれている) | 次の章「一括払いの場合」を参照 |
| サロン窓口で結んだ個別のクレジット契約(ショッピングクレジット) | 対象になり得る。支払総額4万円に満たないものは適用されない(施行令第26条) | クレジット契約書の支払回数と支払総額 |
| 現金・銀行振込・口座振替(サロンへの直接払い) | クレジットではないため、この仕組みは使えない | 次の章を参照 |
このほか、主張できるのは「サロンに対して言えること(施術を受けられない等)」が前提です。倒産の前にすでに施術をすべて受け終えていた場合などは、事情が違ってきます。金額の数え方や、複数回に分けて購入した場合の扱いなど、細かな判断はクレジット会社や消費生活センターに確認してください。
4. 申出の手順
自治体の案内をまとめると、手順はおおむね次のとおりです。
- クレジット会社に電話などで連絡する:カード裏面やクレジット契約書の連絡先に、サロンが倒産(または閉店)して施術を受けられないこと、支払いを止めたいことを伝えます。連絡した日時、担当者名、言われたことをメモしておきます。
- 抗弁書を取り寄せる:杉並区は、クレジット会社から「支払停止等のお申出の内容に関する書面」(支払停止の抗弁書)を取り寄せて提出する流れを案内しています。書式が送られてこない場合は、その旨を伝えて確認します。
- 書面を出す:大阪府は、支払い停止を求める理由を記入した書面をクレジット会社に提出するのが一般的としています。広島県は、販売店とクレジット会社へ書面で支払停止の通知を行い、内容証明郵便にすればより確実と案内しています。出した書面は控えを取っておきます。
- クレジット会社からの連絡を待ち、扱いを確認する:請求がいつから止まるか、申出中の引き落としがどうなるかを確認します。止まるまでの間の扱いは、カード会社ごとに異なることがあるので、自己判断で口座を空にするなどせず、まず確認してください。
- その後の話し合い:支払停止は一時的な措置です。大阪府は、その後は販売店(販売店が倒産した場合はクレジット会社)と問題解決のために交渉する必要があるとしています。
割賦販売法第30条の4第3項では、抗弁を主張した人は、クレジット会社から理由を書いた書面の提出を求められたときは、提出するよう努めなければならないとされています。電話で伝えただけで終わらせず、書面まで出すことが大切です。
5. 抗弁書に書くことと用意するもの
書式はクレジット会社によって違いますが、次の内容を書けるよう準備しておくと手続きが進めやすくなります。
| 項目 | 書く内容の例 | 手元で確認する資料 |
|---|---|---|
| 契約の特定 | 利用日、利用先(明細に出ている名称)、利用金額、支払方法と回数 | カードの利用明細、クレジット契約書 |
| 契約の内容 | 何を買ったか(例:施術10回分の回数券、有効期限〇年〇月まで) | サロンとの契約書、申込画面の控え、領収書 |
| 受けたサービス | 何回受けて、何回残っているか(例:4回利用、6回未利用) | 来店履歴、予約確認メール、会員ページの画面 |
| 支払いを止めたい理由 | 例:〇年〇月〇日に店舗が閉鎖され、残りの施術を受けられなくなった。事業者が破産手続開始の決定を受けたとの通知を受け取った | 閉店・倒産の告知、管財人からの通知、事業者とのやりとりの記録 |
| 申出の内容 | 例:未提供分に関する今後の支払いの停止を求める | ― |
書面には事実を書き、推測は書かないのが基本です。「〇月〇日に閉店の掲示を確認」「〇月〇日に電話したがつながらない」のように、日付と事実を並べると伝わりやすくなります。破産管財人から通知が届いている場合は、その写しを添えられるか、クレジット会社に確認しましょう。
契約書面を見直すと、特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる契約では、概要書面と契約書面に「割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項」を書くことになっています(消費者庁 特定商取引法ガイド)。契約書に記載があれば、それも参考になります。
6. 一括払い・口座振替・現金の場合
カードの一括払い
文京区の消費生活センターは、クレジットカードの一括払いについて、法律上は支払いを止めることはできないとしつつ、カード発行会社が対応する場合もあるため、まずは相談するよう案内しています。一括払いでも、閉店・倒産の事実と施術を受けていないことを記録にまとめ、カード会社に問い合わせてみる価値はあります。どのような対応をとるかはカード会社の判断です。
サロンへの口座振替(月額会費など)
サロンに直接、口座振替で月額会費を払っている場合は、クレジット会社が間に入らないため、支払停止の抗弁の仕組みは使えません。サービスが受けられないのに引き落としが続く場合は、引き落としの停止について、口座のある金融機関やサロン側の告知の連絡先に確認し、消費生活センターにも相談してください。
現金・振込で前払いした場合
前払いした分は、事業者が破産した場合、破産管財人に債権を届け出て配当を待つことになるのが一般的です(鹿児島県・杉並区)。税金や従業員の給与などの支払いが先になるため、配当がほとんど期待できない場合もあると、自治体の消費生活センターは注意しています。届出のしかたは、破産管財人からの通知の案内に従ってください。
7. 申し出た後に気をつけること
- やりとりは記録に残す:電話の日時・担当者・内容のメモ、送った書面の控え、郵便の記録を一か所にまとめます。
- すでに払った分は別問題:福岡県は、受けたサービスより多く支払っていても、事業者の倒産を理由にクレジット会社が返金に応じる義務はなく、返金を受けるのは難しいと説明しています。すでに払った分については、破産手続で債権を届け出るなど、別の手続きの対象になります。
- 契約時の説明に問題があった場合:鹿児島県は、契約時の状況によっては契約の取消しを主張できることもあるとして、消費生活相談窓口への相談を勧めています。勧誘時の説明と実際が違っていた場合は、そのことも相談時に伝えましょう。勧誘や解約のトラブル全般はホワイトニングの消費者トラブルでもまとめています。
- 次に契約するとき:高額の一括前払いには、事業者が倒産したときのリスクがあります。支払方法や料金の比べ方はセルフホワイトニングの料金の見方も参考にしてください。
8. 相談先
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| クレジット会社(カード裏面・契約書の連絡先) | 支払停止の申出、抗弁書の取り寄せ、申出後の請求の扱い |
| 消費者ホットライン188 | どこに相談すればよいか分からないとき。地域の消費生活相談窓口を案内してもらえる |
| 法テラス(サポートダイヤル 0570-078374) | 法的な手続きを検討したいとき。問題に合った制度や相談窓口を案内してもらえる。収入などの条件を満たせば無料法律相談もある |
| 破産管財人(通知書に記載の連絡先) | 事業者が破産した場合の債権の届出、手続の進み具合 |
相談するときは、利用明細、クレジット契約書、サロンとの契約書、残りの回数がわかるもの、閉店・倒産の告知の記録をそろえておくと話が早く進みます。
よくある質問
サロンが倒産したら、クレジットの請求は自動的に止まりますか?
止まりません。サロンとの契約とクレジット会社との契約は別なので、自分からクレジット会社に申し出る必要があります。分割払いなど条件を満たす支払いなら、支払停止の抗弁を主張できる場合があります。
支払停止の抗弁で、すでに払った分も戻ってきますか?
支払停止の抗弁は、これからの支払いを止めるよう求めるもので、すでに支払った分の返還を求めるものではありません。支払い済みの分については、事業者の破産手続で債権を届け出るなど、別の手続きになります。戻るかどうか、いくら戻るかは手続の状況次第で、事前にはわかりません。
カードの一括払いでも支払いを止められますか?
翌月一括払いのように2か月以内に1回で払うものは、割賦販売法の支払停止の抗弁の対象外となるのが一般的です。ただし、カード会社が独自に対応する場合もあるとされているため、閉店・倒産の記録と未利用分をまとめて、まずカード会社に相談してください。
金額が少ない分割払いでも使えますか?
施行令で、分割払いなどは支払総額4万円、リボ払いは3万8千円という基準が定められており、これに満たないものには適用されません。自分の契約が基準を満たすかは、利用明細を手元にクレジット会社へ確認してください。
電話で伝えるだけで足りますか?
書面で出すのが基本です。自治体の案内では、クレジット会社から抗弁書を取り寄せて提出する方法が一般的とされています。控えを残し、電話の内容もメモしておきましょう。
倒産・閉店で困ったときの関連記事
参考資料
- 経済産業省「割賦販売法について(後払い)」
- 日本法令外国語訳データベースシステム「割賦販売法」(第2条第3項・第30条の4・第30条の5)
- 日本法令外国語訳データベースシステム「割賦販売法施行令」(第21条・第26条)
- 消費者庁「『前受金保全措置』の有無を確認するなど、高額料金の一括前払いを行う際は、契約内容や支払い方法等を十分にご検討ください!」
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」
- 大阪府「通っているエステサロンが倒産した。続けてクレジットで代金を支払う必要があるのか。」
- 杉並区「クレジットの分割払い中に、販売会社とトラブルになった」
- 文京区消費生活センター「くらしのパートナー」NO.210(2023年5月)
- 鹿児島県「『施術無料,無期限』などのセールストークには注意!~契約中のエステサロンが倒産」
- 奈良県消費生活センター「エステサロンの倒産」
- 福岡県「消費生活トラブル注意報 第56号(2022年10月)」
- 広島県「クレジットの仕組み」
- 政府広報オンライン「消費者ホットライン188」
- 法務省「法務省だより あかれんが」vol.82(法テラス)
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年10月29日

