セルフホワイトニングサロンの売上(月商)は、「施術できる枠の数 × 稼働率 × 1回あたりの平均単価」で決まります。業界全体の平均売上を示す公的な統計はないため、他店の数字を目安にするより、自分の店のブース数・営業時間・料金から計算するほうが確実です。この記事では、開業を検討している人や運営中のオーナーに向けて、月商の分解のしかたと、仮定を置いた試算例、売上を見直すときの確認点を説明します。
「平均売上」が当てにならない理由
インターネット上には「平均月商○○万円」「月商100万円を超える店は○割」といった数字が出回っていますが、多くは出典がはっきりしないか、個人の推計です。セルフホワイトニングサロンの売上を業界全体で集計した公的な統計は見当たりません。
また、同じセルフホワイトニングでも、ブースの数、営業時間、料金体系(単発・回数券・月額)、立地が店ごとに大きく違います。平均の数字が正しかったとしても、自分の店に当てはまるとは限りません。売上の見通しは、次に説明する式に自分の店の条件を入れて考えます。
月商を決める3つの要素
| 要素 | 求め方 | 決まるもの |
|---|---|---|
| 施術できる枠の数 | ブース数 × 1日の枠数 × 営業日数 | 店の売上の上限(キャパシティ) |
| 稼働率 | 実際の施術回数 ÷ 施術できる枠の数 | 集客とリピートの強さ |
| 平均単価 | 施術による売上 ÷ 施術回数 | 料金設計とメニューの組み合わせ |
たとえば、営業時間10時間、1枠60分(説明・清掃を含む)なら1ブースで1日10枠です。月25日営業なら1ブースあたり月250枠になります。どれだけ集客がうまくいっても、売上はこの枠数×単価を超えません。
試算例:ブース数と稼働率で月商はこう変わる
以下は説明のための仮定です。1ブースあたり月250枠、1回あたりの平均単価3,000円(新規・回数券・月額会員の利用を合わせた平均)としています。
| 稼働率 | 1ブース(月250枠) | 2ブース(月500枠) | 3ブース(月750枠) |
|---|---|---|---|
| 30% | 75回・22.5万円 | 150回・45万円 | 225回・67.5万円 |
| 50% | 125回・37.5万円 | 250回・75万円 | 375回・112.5万円 |
| 70% | 175回・52.5万円 | 350回・105万円 | 525回・157.5万円 |
計算の確認:2ブース・稼働率50%の場合、500枠×50%=250回、250回×3,000円=75万円です。
この表から分かるのは、ブースが少ない店ほど、稼働率を上げても月商の上限が低いということです。高い月商を目標にするなら、まず枠数(ブース数と営業時間)が目標に足りているかを確かめます。逆に、ブースを増やしても稼働率が低ければ、家賃や機器の費用だけが増えます。
客数で見る:新規・継続・月額会員に分ける
実際の売上は、来店する人の種類ごとに分けると改善点が見えます。2ブースの店で、次の仮定を置いた例です。
| 売上の内訳 | 計算(仮定) | 売上 | 施術回数 |
|---|---|---|---|
| 新規(初回体験) | 40人 × 2,500円 | 10万円 | 40回 |
| 回数券の販売 | 5件 × 30,000円(10回分) | 15万円 | 0回(購入月の施術は下の消化分に含む) |
| 回数券の消化 | 購入済みの人の来店 60回 | 0円(購入時に売上済み) | 60回 |
| 月額会員 | 60人 × 6,000円(平均月3回来店) | 36万円 | 180回 |
| 物販 | 歯みがき剤などのホームケア用品 | 2万円 | ― |
| 合計 | 63万円 | 280回 |
計算の確認:売上は 10+15+0+36+2=63万円、施術回数は 40+60+180=280回で、2ブース500枠に対する稼働率は56%です。
この例で分かるのは、回数券は販売した月に売上が立ち、施術はその後の月に発生するということです。回数券の販売が多い月は売上が大きく見えますが、翌月以降は売上のない施術が枠を使います。月商だけでなく、施術回数と「まだ消化されていない回数券の残り」を一緒に見ておくと、売上の波に振り回されにくくなります。会計上の扱い(前受金として処理するかなど)は税理士に確認してください。
損益分岐点の月商を出す
月商の目標は、まず赤字にならないラインから決めます。損益分岐点は、毎月の固定費を、1回あたりに残るお金(単価から消耗品や決済手数料を引いた額)で割って求めます。
- 仮定:月の固定費35万円(家賃12万円、アルバイト人件費12万円、広告・掲載費5万円、光熱費・通信費3万円、システム1万円、雑費2万円)
- 仮定:平均単価3,000円、1回あたりの消耗品300円、決済手数料は売上の3%(90円)
- 1回あたりに残るお金:3,000-300-90=2,610円
- 損益分岐点:35万円 ÷ 2,610円 ≒ 134.1回 → 135回(月商40.5万円、2ブースなら稼働率27%)
計算の確認:135回の場合、売上40.5万円-消耗品4.05万円-手数料1.215万円=35.235万円で、固定費35万円を上回ります。134回では34.974万円で下回ります。
この計算にはオーナー自身の生活費が入っていません。オーナーが店の利益から生活費を取る場合は、その金額を固定費に足して計算し直してください。開業時の費用の見積もりは「セルフホワイトニングサロンの開業費用」、赤字が続くときの見直しは「収支改善|損益分岐点と資金繰りの見直し方」で詳しく説明しています。
売上が伸びないときに確認する数字
月商が目標に届かないときは、どの要素が足りないのかを数字で切り分けます。
| 確認する数字 | 求め方 | 低いときに見直すこと |
|---|---|---|
| 新規数 | 月の初回来店人数 | Googleマップの店舗情報、予約サイトの掲載内容、SNS、紹介の仕組み |
| 継続率 | 初回のあと2回目以降も来た人 ÷ 新規数 | 初回の説明(できること・できないこと)、次回予約の案内、料金プランの分かりやすさ |
| 来店頻度 | 月の施術回数 ÷ 来店した人数 | 会員や回数券の人へのお知らせ、予約の取りやすさ |
| 稼働率(時間帯別) | 時間帯ごとの施術回数 ÷ 枠数 | 空いている時間帯のメニュー、営業時間そのものの見直し |
| 平均単価 | 施術売上 ÷ 施術回数 | 初回割引の深さ、回数券や月額プランの1回あたり価格 |
新規が多いのに継続率が低い場合は、集客よりも初回の体験と説明を見直すほうが効果的です。逆に継続率は高いのに新規が少ない場合は、店の情報が見つけてもらえていない可能性があります。集客の具体的な方法は「媒体依存を下げる集客導線設計」を参考にしてください。
月商の目標を立てて毎月確かめる手順
売上の見通しは一度計算して終わりではなく、毎月の実績と比べて修正していきます。次の順番で進めると、数字が足りない原因を見つけやすくなります。
- 損益分岐点を出す:家賃・人件費・広告費などの固定費と、1回あたりに残るお金から、赤字にならない施術回数を計算する。
- 目標の月商を決める:損益分岐点に、オーナーの生活費や借入の返済、設備の買い替えのための積立を足した金額を目標にする。
- 必要な稼働率に直す:目標の施術回数を枠数で割り、必要な稼働率を出す。稼働率が高すぎて現実的でなければ、営業時間・ブース数・単価のどれを変えるかを検討する。
- 新規と継続に分ける:必要な施術回数のうち、新規で何回、継続のお客様で何回をまかなうかを決める。継続のお客様の来店が増えるほど、毎月の新規集客の負担は軽くなる。
- 毎月の実績と比べる:月末に新規数、継続率、来店頻度、稼働率、平均単価を記録し、計画と差が大きい項目から対策を考える。
記録は表計算ソフトで十分です。予約システムから施術回数と来店者を書き出せるようにしておくと、毎月の集計の手間を減らせます。数字を毎月同じ形で残しておくと、季節による増減(年末や春の行事前に増えるなど)も自分の店のデータで分かるようになり、翌年の計画の精度が上がります。
売上を上げるときに守りたいルール
単価や継続率を上げようとして、契約や広告の進め方で問題を起こすと、売上以上のものを失います。
- その場で契約させない:国民生活センターは2025年7月、無料体験のあとに回数券や月額プランを急いで契約させられたという相談を紹介し、注意を呼びかけています。料金、契約期間、解約条件を書面で示し、持ち帰って検討できるようにします。
- 効果を約束しない:セルフホワイトニングは歯の表面の着色汚れのケアです。「必ず白くなる」「○トーン明るく」のような表現は、根拠を示せなければ景品表示法上の不当表示になり得ます。
- 過酸化物を使わない:過酸化水素などを含む歯科用ホワイトニング材は医療機器で、使うかどうかは歯科医師が判断します(厚生労働省の回答、2025年4月)。単価を上げるために「医療用と同じ」とうたうメニューは作れません。
よくある質問
Q. 月商100万円は現実的な目標ですか?
A. 枠数と単価で計算すると判断できます。平均単価3,000円なら月約334回の施術が必要で、1ブース(月250枠)では上限を超えてしまいます。2ブースなら稼働率67%、3ブースなら45%が必要です。自分の店の枠数で必要な稼働率を出し、それが実現できそうかを考えてください。
Q. 単発・回数券・月額プランのどれが売上を安定させますか?
A. 月額プランは毎月の売上が読みやすく、回数券は販売した月に売上がまとまって立ちます。どちらも、解約条件や有効期限を分かりやすく示すことが前提です。新規の人がまず単発で試せるメニューも残しておくと、契約への不安を減らせます。
Q. 稼働率はどう測ればよいですか?
A. 予約システムや予約台帳から、月の施術回数を数え、ブース数×1日の枠数×営業日数で割ります。曜日別・時間帯別にも出すと、空いている時間の対策が立てやすくなります。
Q. 物販は売上の柱になりますか?
A. 歯みがき剤などのホームケア用品は客単価を少し上げる手段にはなりますが、施術売上に比べると小さいことが多いです。商品の効能を広告で説明する場合は、その商品の表示できる範囲を超えないよう注意してください。
参考資料
- 国民生活センター「無料体験と思ったら…?『セルフホワイトニング』の契約トラブル」(2025年7月22日)
- 厚生労働省「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」(2025年4月18日回答)
- 山梨県「景品表示法について」
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年10月29日

