セルフホワイトニングサロンの商圏分析は、「来てくれそうな人がどこに何人いるか」「同じ人を取り合う店がいくつあるか」「その人たちが店の前を通るか」を、公開データと現地調査で確かめる作業です。人口や年齢構成は総務省統計局のjSTAT MAPやe-Statで誰でも調べられ、それを仮定の割合で来店数に置き換えると、ブース数や売上計画が現実的かどうかを判断できます。この記事では、開業や出店を考えている人に向けて、商圏の決め方、公開データの調べ方、競合の数え方、現地調査のチェックリスト、見込み客数から来店数への試算の手順を解説します。
商圏分析で確かめる3つのこと
商圏とは、店に来るお客様が住んでいる・働いている・通っている範囲のことです。セルフホワイトニングは日常の買い物ほど頻繁に利用するものではなく、予約して来店するサービスなので、住んでいる場所だけでなく、通勤・通学や買い物の動線上にあるかどうかも大切になります。商圏分析では、次の3つを順に確かめます。
| 確かめること | 主な調べ方 | 計画への使い方 |
|---|---|---|
| 人口:対象となる人がどれだけいるか | jSTAT MAP、国勢調査の小地域集計、住民基本台帳の人口 | 見込み客数の土台にする |
| 競合:同じお客様を取り合う店がいくつあるか | 地図検索・予約サイト・現地での確認 | 獲得できる割合(シェア)の仮定に反映する |
| 動線:その人たちが店の近くを通るか | 駅の乗降客数、商業施設の来館者数、現地での通行量の計測 | 認知のされやすさ、看板・入口の位置の判断に使う |
日本政策金融公庫の「創業の手引」は、商圏をもとにした売上予測の例として「世帯数×1世帯あたり消費額×シェア率」という式を示し、世帯数は出店予定地から一定距離の圏内の世帯数、シェア率は商圏内の競合店の状況から仮定するとしています。人口・競合・動線を調べるのは、この式の数字に根拠を持たせるためです。
商圏の範囲の決め方
商圏の広さに決まった数字はありません。立地(駅前・商業施設内・住宅地)、交通手段、周りの環境によって大きく変わるため、最初から一つの範囲に決めつけず、いくつかの範囲で調べて比べるのが現実的です。
- 距離で区切る:店の予定地を中心に、例えば半径500m・1km・2kmのように複数の円で人口を比べる。データを取りやすく、比較しやすい
- 移動時間で考える:徒歩何分、電車で何駅といった、お客様が実際に「通える」と感じる範囲を想像し、円の範囲が実感と合っているかを確かめる。川・線路・大きな道路で人の流れが分断されていないかも見る
- 働く人・買い物客も考える:オフィス街や商業施設では、住んでいる人より昼間に来る人が多いことがある。住民の数だけで判断しない
どの範囲を使ったかは、計画書に必ず書いておきましょう。後から実際の来店客の住所の分布(会員情報の郵便番号など)と比べると、仮定が合っていたかを確かめられます。
公開データで人口・年齢構成を調べる
jSTAT MAP(地図で見る統計)
jSTAT MAPは、政府統計の総合窓口(e-Stat)で提供されている地理情報システムで、e-Statでは「誰でも使えるWebサイト」と説明されています。統計地図の作成のほか、地図上で指定した地点の周辺の統計をまとめたレポートを作ることができます。レポートには、年齢階級別の人口、世帯数、事業所数などが表やグラフで入ります。
統計局の広報資料で紹介されている、リッチレポートの作り方は次のとおりです(リッチレポートの作成にはe-StatのユーザIDでのログインが必要です)。
- e-Statで「新規登録」からユーザ登録をする(メールアドレスで仮登録し、届いたメールのURLから本登録)
- jSTAT MAP(地図で見る統計)を開いてログインする
- 地図で店の予定地を探し、表示を調整する
- 「統計地図作成」から「レポート作成」→「リッチレポート」を選ぶ
- エリアの設定で半径を指定し、不要な項目のチェックを外す
- 地図上で予定地を選んでレポートを作成し、ダウンロードする
同じ地点で半径を変えたレポートや、候補地ごとのレポートを並べると、範囲や場所による違いが見えます。
国勢調査の小地域集計
国勢調査は全数調査の利点を生かして、市区町村よりも小さい町丁・字等の単位で、年齢5歳階級別の人口や世帯の種類別の数などを集計しています。結果は統計局のホームページやe-Statで誰でも利用できます。商圏にかかる町丁を選んで年齢別の人口を足し合わせれば、円の範囲にこだわらず商圏の人口を見積もれます。
統計局の令和7年国勢調査のページでは、人口等基本集計の公表日は2026年9月29日とされ、町丁・字等別の小地域集計は、各集計の公表後に順次公表されるとされています。使うデータが何年の調査かを確認し、計画書にも調査年を書いておきましょう。
住民基本台帳の人口
国勢調査は5年ごとの調査なので、その間の変化を見るには住民基本台帳の人口も役に立ちます。総務省は毎年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」を公表しており、都道府県別・市区町村別の年齢階級別人口も掲載されています。町丁別の人口は、多くの自治体が独自に公表しているので、出店予定地の自治体のホームページで探してください。
人口のどこを見るか
- 年齢構成:自分のサービスの主な利用者として想定する年齢層の人口と、その割合
- 世帯数と世帯の種類:単身世帯が多いか、家族世帯が多いか
- 増減の傾向:過去の調査や住民基本台帳と比べて増えているか減っているか
- 昼間の人口:事業所数が多い地域は、住民以外の来店も見込める可能性がある
競合の数え方(一般論)
競合は、「同じお客様が、同じ目的で比べる先」です。セルフホワイトニングの場合、専門店だけでなく、メニューの一つとして提供している美容サロンや、歯科医院のホワイトニングも、お客様から見れば比較の対象になりえます。数えるときは次のように分けて整理すると、計画に反映しやすくなります。
| 区分 | 数え方の例 | 記録しておく項目 |
|---|---|---|
| セルフホワイトニングを主なサービスとする店 | 地図検索・予約サイトで、商圏の範囲内の店を一覧にする | 距離、営業時間、ブース数(わかる範囲)、料金体系(初回・回数券・月額)、予約の取りやすさ |
| メニューの一つとして提供している美容サロン | 予約サイトのメニュー検索などで確認する | メニューの位置づけ、料金体系 |
| 歯科医院のホワイトニング | 商圏内の歯科医院のうち、ホワイトニングを案内しているところを確認する | 提供の有無と料金の目安(公開されている範囲) |
数えた結果は、優劣をつけるためではなく、「この商圏で自店が獲得できる割合をどのくらいと仮定するか」を決めるために使います。料金や予約の空き状況は変わるので、調べた日付も記録してください。店の評判や口コミの内容を計画書に転記したり、他店を名指しで比べる広告を作ったりするのは避けましょう。
動線と来館者数の確認
人口が多くても、お客様が店の前を通らなければ認知されにくくなります。動線は公開データと現地調査を組み合わせて確かめます。
- 駅の乗降客数:国土交通省の国土数値情報「駅別乗降客数」は、鉄道事業者の資料をもとに駅ごとの1日あたりの乗降客数を整備したオープンデータです。ただし数値は各事業者が独自に算出したもので統一された基準ではなく、一部の駅はデータがない・非公開とされています。最新のデータ年度も確認して使いましょう
- 商業施設の来館者数:施設が公表していればそれを確認し、公表されていなければ出店の相談の際に施設の運営会社に聞きます。年間の数字だけでなく、曜日・時間帯・季節による違い、自店が入る予定のフロアや通路の人の流れも確認します
- 現地での通行量の計測:平日・休日、朝・昼・夕方など時間帯を変えて、一定時間に前を通る人の数と、年齢層・性別の印象を記録する。同じ方法で複数の候補地を比べる
現地調査のチェックリスト
- 最寄り駅やバス停から歩いて、道順がわかりやすいか、途中に入りにくい場所がないか
- 平日と休日、昼と夜で人通りがどう変わるか
- 店の入口や看板が、人の流れから見える位置にあるか
- 商業施設なら、営業時間・休館日・フロアの人の流れ・近くのテナントの業種
- 周りに、想定する客層が利用する店(美容室、ネイル、フィットネス、カフェなど)があるか
- 競合店の場所と、予定地からの距離・道順
- 駐車場・駐輪場の有無(車や自転車で来る地域の場合)
- 夜の周辺の明るさや、一人で来店する人にとっての安心感
- 調べた日時・天気・方法を記録したか(後で比較できるように)
物件の種類ごとの比較や契約の確認点は物件の選び方で解説しています。
試算:見込み客数から来店数へ(仮定)
以下は説明のための仮定の数字で、実際の利用率や来店数を示すものではありません。割合は、調べた人口・競合・動線をもとに自分で置き、何通りかで計算するためのものです。
| 段階 | 仮定 | 計算 |
|---|---|---|
| 商圏内の対象年齢の人口 | 40,000人 | jSTAT MAPや小地域集計で調べた数字を入れる |
| 年に1回以上セルフホワイトニングを試してみたいと考える人 | 人口の5% | 40,000人×5%=2,000人 |
| そのうち自店に初回来店する人 | 10% | 2,000人×10%=年200人(月平均約16.7人) |
| 初回の後に続けて通う人 | 初回来店者の30% | 200人×30%=60人 |
| 続けて通う人の来店頻度 | 月1.5回 | 60人×1.5回=月90回 |
| 月の来店数の見込み | ― | 約16.7回+90回=約107回 |
次に、店の受け入れ能力と比べます。「創業の手引」のサービス業の売上予測の式(客単価×設備単位数×回転数×営業日数)と同じ考え方で、ブース2台、1台あたり1日10枠、月25日営業と仮定すると、月の枠数は2×10×25=500枠です。この仮定での稼働率は約107÷500=約21%になります。
割合を変えたときの比較
| 試してみたい人の割合(仮定) | 年間の初回来店 | 続けて通う人 | 月の来店数 | 稼働率(500枠) |
|---|---|---|---|---|
| 2.5% | 100人(月約8.3人) | 30人(月45回) | 約53回 | 約11% |
| 5% | 200人(月約16.7人) | 60人(月90回) | 約107回 | 約21% |
| 10% | 400人(月約33.3人) | 120人(月180回) | 約213回 | 約43% |
このように、割合の仮定ひとつで来店数は大きく変わります。商圏分析の目的は正確な予言ではなく、「どの割合なら採算が合うか」「その割合は人口・競合・動線から見て無理がないか」を確かめることです。必要な来店数から逆算した割合が、調べた結果から見て高すぎるなら、ブース数・家賃・場所を見直すきっかけになります。売上と必要な来店数の関係は売上・月商の考え方、初回来店を増やす方法は集客の考え方で解説しています。
よくある質問
Q. 商圏は半径何kmで考えればよいですか?
A. 決まった数字はありません。駅前・商業施設・住宅地など立地や交通手段によって変わるため、複数の範囲で人口を調べて比べ、徒歩や電車での移動時間の感覚とも照らし合わせて決めてください。使った範囲は計画書に書いておき、開業後に実際の来店客の分布と比べると精度を上げられます。
Q. jSTAT MAPは誰でも使えますか?
A. e-Statでは、jSTAT MAPは誰でも使えるWebサイトとして紹介されています。ただし、周辺の統計をまとめたリッチレポートの作成にはe-StatのユーザIDでのログインが必要で、ユーザ登録はメールアドレスで行います。
Q. 国勢調査のデータは古くないですか?
A. 国勢調査は5年ごとの調査です。令和7年調査の結果は順次公表されているため、使うデータの調査年を確認してください。間の年の変化は、総務省や自治体が公表している住民基本台帳の人口で補えます。
Q. 競合店が多い場所は避けるべきですか?
A. 一概には言えません。競合が多いことは需要がある地域であることを示す場合もあれば、獲得できる割合が小さくなることを意味する場合もあります。競合の数・料金体系・予約の取りやすさを記録し、仮定のシェアを低めにしても採算が合うかを試算して判断してください。
Q. 商圏分析の結果は融資の申込みにも使えますか?
A. 日本政策金融公庫の創業計画書には、販売ターゲットや競合・市場の状況、売上の根拠を書く欄があります。商圏の人口・競合・動線を調べた結果と、来店数の仮定と計算は、その根拠として使えます。
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参考資料
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「地図で見る統計(jSTAT MAP)とは」
- 総務省統計局「地図で見る統計(jSTAT MAP)を使ってみよう!」(PDF)
- 総務省統計局 統計トピックスNo.57「国勢調査でわかる小地域の人口状況」
- 総務省統計局「令和7年国勢調査 調査の結果」
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
- 国土交通省 国土数値情報「駅別乗降客数データ」
- 日本政策金融公庫「創業の手引」(PDF)
- 日本政策金融公庫「創業計画書」様式(PDF)
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年11月1日

