セルフホワイトニングサロンの開業資金を借りるときは、まず日本政策金融公庫(日本公庫)の創業向け融資と、自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き)の二つを比べるのが基本です。どちらも審査があり、借りられるかどうかは創業計画書の中身と、自己資金を含む資金計画の筋の通り方で決まります。この記事では、開業を考えている人に向けて、公的機関が公開している資料で確認できた制度の内容、創業計画書の書き方の要点、自己資金と返済の考え方を、仮定の試算とあわせて整理します。
開業資金の主な借り先:日本公庫と制度融資の違い
創業時の資金調達でよく使われるのは、政府系金融機関である日本公庫の融資と、都道府県や市区町村が用意する制度融資です。仕組みが違うため、窓口・手続き・かかる時間も違います。
| 比較項目 | 日本政策金融公庫の創業向け融資 | 自治体の制度融資 |
|---|---|---|
| お金を貸す人 | 日本公庫(国民生活事業) | 民間の金融機関(自治体は制度を用意し、利子や保証料を補助する場合がある) |
| 保証 | 創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できると公庫が案内している | 信用保証協会の保証を条件とするものが多い(所定の信用保証料がかかる) |
| 申込み先 | 公庫の支店(インターネット申込が基本) | 自治体の窓口・取扱金融機関・信用保証協会(制度によって異なる) |
| 条件 | 制度ごとに対象・限度額・返済期間が決まっている | 開業する地域や納税状況などの要件があり、自治体ごとに条件が違う |
| 時間 | 公庫のQ&Aでは、申込みから融資決定までは平均的に3週間程度 | 自治体・保証協会・金融機関の三者が関わるため、入金まで時間がかかることがある |
中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、制度融資について「資金の出所はあくまでも金融機関で、行政は制度の提供という形」と説明し、金利の固定や利子補給、据置期間など利用しやすい条件が整っている一方、行政・保証協会・金融機関の連携が必要なため入金までに時間がかかると注意しています。開業日から逆算して、どちらに先に相談するかを決めましょう。
日本公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の概要
日本公庫の創業向けの代表的な融資制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」です。公庫の制度ページで確認できた主な内容は次のとおりです(2026年11月1日確認。条件は改定されることがあるため、申込み前に必ず公式ページで確かめてください)。
| 項目 | 公式ページの記載 |
|---|---|
| 利用できる人 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方。新たに営もうとする事業について適正な事業計画を策定しており、それを遂行する能力が十分あると認められる方に限られ、創業計画書の提出などで事業計画の内容を確認する |
| 資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金 10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率が基本。女性・35歳未満・55歳以上の方など、一定の要件に当てはまる方には特別利率が適用される。使いみち・返済期間・担保の有無などで利率が変わる |
| 担保・保証人 | 希望を聞きながら相談 |
| 併用できる特例 | 経営者保証免除特例制度、創業支援貸付利率特例制度、賃上げ貸付利率特例制度 |
限度額はあくまで上限で、実際に借りられる金額は審査で決まります。公庫も、審査の結果、希望に沿えない場合があると明記しています。利率の具体的な数字は時期によって変わるため、この記事では書かず、公式ページの最新の利率表で確認することをおすすめします。
申込みから融資までの流れ
公庫の「創業予定の方」向けページでは、次の流れが示されています。
- 相談:事業資金相談ダイヤル、または支店・オンラインでの予約相談
- 申込み:インターネット申込が基本(郵送の場合は借入申込書を提出)。個人は創業予定地に近い支店、法人は本店所在地に近い支店が窓口
- 面談:資金の使いみちや事業計画について話を聞かれる。店舗の予定地を訪問されることもある。オンライン面談も可能
- 融資:決定後に契約手続きをして、指定口座に送金される
- 返済:原則として月賦払い(元金均等・元利均等・ステップ返済など)
申込みで用意する主な書類は、創業計画書、設備資金を申し込む場合の見積書、法人の場合の履歴事項全部証明書、本人確認書類、許認可が必要な事業の場合の許認可証、送金先口座の通帳の写しなどです。面談には、事業計画に関連する資料と、資産・負債がわかる書類を持参するよう案内されています。
自治体の制度融資と信用保証協会の仕組み
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会が協力して運営する融資です。たとえば東京都は、都の制度融資を「東京都と東京信用保証協会と指定金融機関の三者協調のうえに成り立っている融資制度」と説明し、利用には東京信用保証協会の保証が必要だとしています。
信用保証協会は、中小企業が金融機関から事業資金を借りるときに保証人となる公的機関です。借り手は保証の対価として所定の信用保証料を支払います。J-Net21は、保証は金融機関に対するもので、事業者の返済義務がなくなるわけではないと注意しています。保険のように「返さなくてよくなる」ものではありません。
創業時に使える保証制度として、全国信用保証協会連合会は次の制度を紹介しています。
| 保証制度 | 主な対象(抜粋) | 保証限度額 |
|---|---|---|
| 創業関連保証 | 事業を営んでいない個人で、1か月以内(市区町村の認定特定創業支援等事業の支援を受けて創業する場合は6月以内)に事業を開始する具体的計画がある方、設立後5年未満の法人など | 3,500万円 |
| スタートアップ創出促進保証制度 | 2か月以内に法人を設立する個人、設立後5年未満の法人など。保証料率に0.2%上乗せすることで、経営者が会社の連帯保証人にならなくてよい制度 | 3,500万円 |
これらを併用する場合は、合計で3,500万円が保証限度額とされています。実際の融資条件(利率、返済期間、自己資金の要件、利子補給・保証料補助の有無)は自治体ごとに違うため、開業する地域の自治体の制度融資のページと、地域の信用保証協会で確認してください。
自己資金の考え方
自己資金は、開業のために自分で用意したお金です。公庫のQ&Aは「自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」とし、公庫の新規開業実態調査では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度だと紹介しています。「何割あれば必ず借りられる」という基準が示されているわけではありません。
公庫の「創業の手引」は、創業にかかる費用を借入金に頼ると、創業後の毎月の返済が大きな負担になり資金繰りが苦しくなる場合があるとして、創業を思い立ったら着実に自己資金を蓄えることを勧めています。自己資金については、次の点を整理しておくと説明しやすくなります。
- いつから、どうやって貯めたか:給与からの積立など、貯めてきた経緯を通帳などで説明できるか。一時的に入金したお金を自己資金に見せるようなことはしない
- すでに支払った開業費用:物件の手付金や機器の頭金など、支払い済みのものは領収書を残しておく(創業計画書の注意書きでも、支払済みの場合は領収書・請求書の添付が求められている)
- 家族などからの借入:創業計画書では「親、兄弟、知人、友人等からの借入」は自己資金と別の欄に書く。返済の条件も決めておく
- 手元に残すお金:自己資金を開業費用に全部使うと、開業直後の赤字や急な出費に対応できない。生活費の備えも別に考える
開業費用の内訳そのものは開業費用の内訳と試算例と開業に必要な資金とランニングコストの考え方で解説しています。
創業計画書の書き方の要点
公庫の創業計画書の様式は、次の9つの項目で構成されています。様式には、この書類の代わりに自分で作成した計画書を提出してもよいという案内があり、「創業の手引」も計画書の様式に決まりはないとしています。
| 項目 | セルフホワイトニングサロンで書くことの例 |
|---|---|
| 1 創業の動機 | なぜこの事業を、なぜこの場所で始めるのか |
| 2 経営者の略歴等 | 接客・美容・店舗運営などの経験、事業経験の有無、取得資格 |
| 3 取扱商品・サービス | メニュー(初回・回数券・月額制など)とそれぞれの売上の割合の見込み、セールスポイント |
| 4 従業員 | 3か月以上続けて雇う予定の人数(家族・パートの内訳) |
| 5 取引先・取引関係等 | 消耗品の仕入先、予約・決済の外注先、回収・支払の条件。販売ターゲット、競合・市場の状況 |
| 6 関連企業 | 自分や配偶者が経営する会社があれば記入 |
| 7 お借入の状況 | 住宅・車・カードなど個人の借入の残高と年間返済額 |
| 8 必要な資金と調達方法 | 設備資金(内装・LED照射器・什器など。見積先と金額)と運転資金、その調達(自己資金・家族等からの借入・金融機関からの借入)。必要な資金と調達の合計を一致させる |
| 9 事業の見通し(月平均) | 創業当初と軌道に乗った後の売上高・売上原価・人件費・家賃・支払利息・その他経費・利益。売上の根拠(営業時間・営業日数・客単価など) |
計画書で特に詰めておきたいのは、売上の根拠です。「創業の手引」は、サービス業の売上予測の例として「客単価×設備単位数×回転数×営業日数」という式を示しています。セルフホワイトニングサロンなら、ブース数、1日に回せる枠数、営業日数、客単価の見込みを書き、その数字にした理由(商圏の人口、競合の状況、立地の通行量など)を添えると説得力が増します。商圏の調べ方は当サイトの商圏分析の記事で解説しています。
また、手引は、計画書を第三者に見てもらいアドバイスをもらって精度を高めることを勧めています。創業者の約半数が創業前に予想していた売上に至っていないという調査結果も紹介されており、売上は控えめな見込みと、さらに下振れした場合の両方で計算しておくのが安全です。
試算:借入額と毎月の返済(仮定)
以下は説明のための仮定の数字で、実際の融資条件や金利を示すものではありません。
| 項目(仮定) | 金額 |
|---|---|
| 必要な資金 | 設備資金400万円+運転資金200万円=600万円 |
| 調達 | 自己資金150万円(600万円の25%)+借入450万円 |
| 借入の条件 | 返済期間5年(60回)、年利2.0%、元金均等返済、据置なし |
元金均等返済では、毎月の元金は450万円÷60回=75,000円です。初月の利息は450万円×2.0%÷12か月=7,500円なので、初回の返済額は82,500円になり、元金が減るにつれて利息も減っていきます。この月割りの簡易計算では、5年間の利息の合計は約22.9万円(7,500円×61÷2=228,750円)です。同じ条件を元利均等返済にすると、毎月の返済額は約78,875円で一定になり、利息の合計は約23.2万円です。
据置期間を6か月設けると、その間は利息(月7,500円)だけを払い、残りの54回で元金を返します。元金の返済は月約83,333円(450万円÷54回)に増え、利息の合計は据置中の45,000円と、その後の206,250円(7,500円×55÷2)で約25.1万円になります。据置は開業直後の負担を軽くしますが、総額と、据置が終わった後の負担は増えます。
返済は利益から:手元に残るお金を確かめる
「創業の手引」は、借入金は毎月事業で得た利益から返済するのが一般的だとして、「利益-借入の返済元金-家計費(個人事業主の場合のみ)=手元に残るお金」という式を示しています。仮に、利息を含む経費を差し引いた月の利益が30万円、家計費が20万円だとすると、30万円-7.5万円-20万円=2.5万円が手元に残ります。この仮定では、売上が少し下振れしただけで手元資金が減っていくことがわかります。
所得税などの税金も利益から支払うため、実際の余裕はさらに小さくなります。借入額・返済期間・据置の有無を何通りか変えて計算し、売上が見込みを下回った月でも返済できるかを確かめてから申し込みましょう。固定費と売上の関係は損益分岐点の考え方で解説しています。
申込み前のチェックリスト
- 日本公庫と制度融資の両方について、開業日から逆算した相談・申込みの時期を決めた
- 公庫の制度ページで、対象・限度額・返済期間・利率・特例制度の最新の内容を確認した
- 開業する地域の自治体の制度融資の条件(対象、自己資金の要件、利子補給・保証料補助)を確認した
- 設備資金の見積書をそろえた(内装・LED照射器・什器・看板など)。支払い済みのものは領収書を保管した
- 自己資金を貯めてきた経緯を通帳で説明できる
- 個人の借入(住宅・車・カードなど)の残高と年間返済額を整理した
- 創業計画書の「必要な資金」と「調達方法」の合計が一致している
- 売上の根拠(ブース数・枠数・営業日数・客単価・商圏)を説明できる
- 売上が見込みを下回った場合でも返済と生活費を払えるかを計算した
- 計画書を第三者(公庫の予約相談、税理士など)に見てもらった
よくある質問
Q. 自己資金がゼロでも融資は受けられますか?
A. 日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の制度ページには、自己資金の要件は書かれていません。ただし公庫のQ&Aは自己資金を重要な要素のひとつとしており、自己資金がない場合は、返済できる計画であることをより丁寧に説明する必要があります。自治体の制度融資には自己資金の要件がある場合もあるため、それぞれの条件を確認してください。
Q. 保証人や担保は必要ですか?
A. 日本公庫のQ&Aでは、創業期の方(新たに事業を始める方や、事業開始後税務申告を2期終えていない方)は原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できると案内されています。制度融資は信用保証協会の保証を条件とするものが多く、保証料がかかります。
Q. 申し込んでからどのくらいで融資されますか?
A. 日本公庫のQ&Aでは、申込みから融資が決まるまで平均的に3週間程度とされ、条件によってはそれ以上かかることもあります。制度融資は自治体・保証協会・金融機関の手続きが重なるため、さらに時間がかかることがあります。物件の契約や内装工事の支払い時期と合わせて、早めに相談してください。
Q. 創業計画書は公庫の様式で書かなければいけませんか?
A. 公庫の創業計画書の様式には、自分で作成した計画書を提出してもよいという案内があります。ただし、公庫の様式の項目(動機、経歴、サービス、取引先、必要資金と調達方法、事業の見通し)は審査で確認される内容の目安になるので、自作の場合も同じ項目を漏れなく入れておくと安心です。
Q. 開業前に機器を購入した分も融資の対象になりますか?
A. 支払いの時期や扱いは個別の判断になるため、支払う前に公庫や金融機関に相談してください。創業計画書の注意書きでは、すでに支払った分は領収書や請求書を添えるよう求められているので、必ず保管しておきましょう。
開業準備の関連記事
参考資料
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 日本政策金融公庫「創業予定の方」(融資の流れと必要書類)
- 日本政策金融公庫「Q&A」(創業支援)
- 日本政策金融公庫「創業計画書」様式(PDF)
- 日本政策金融公庫「創業の手引」(PDF)
- 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」
- 全国信用保証協会連合会「初めての融資と信用保証」
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「制度融資の活用」
- 東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資」
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年11月1日

