同じ商圏にセルフホワイトニングサロンが増えると、エリア全体の来店需要が同じように増えない限り、1店あたりの来店数は分かれていきます。来店数が減ると、ブースの稼働率が下がり、損益分岐点に届きにくくなります。この記事では、これから開業や出店を考えている人に向けて、食い合い(カニバリゼーション)の仕組みを仮定の試算で示し、自分の出店候補地がどのくらい混み合っているかを調べる方法、飽和のサイン、フランチャイズ本部の近隣出店について確認すること、飽和したエリアで出店する場合に考えることを解説します。
食い合い(カニバリゼーション)とは
食い合い(カニバリゼーション)とは、同じお客様を対象にした店やサービスが近くに増えることで、お互いの売上を奪い合う状態のことです。もともとは自社の新商品が自社の既存商品の売上を減らすことを指す言葉ですが、出店の場面では、同じ商圏に同じ種類の店が増えて1店あたりの来店数が減ることを指して使われます。
セルフホワイトニングは、毎日利用するサービスではなく、予約して通うサービスです。エリアに店が増えたからといって、そこに住む人・働く人が急に増えるわけではありません。店が増えることでサービスの認知が広がり、試してみる人が増える面もありますが、その増え方が店の増え方に追いつかなければ、1店あたりの来店数は減ります。どちらが大きいかはエリアによって違うため、思い込みではなく、数えて試算して判断することが大切です。
なお、業界全体の店舗数を継続して集計した公的な統計は見当たりません。「業界全体で飽和している」かどうかを一律に判断するのではなく、自分が出店を考えているエリアで、実際にどれだけの店が同じお客様を取り合っているかを確かめましょう。
同じ商圏に店が増えると何が起きるか
同じ商圏に店が増えたとき、経営に表れやすい変化を整理すると次のようになります。どれも必ず起きるわけではありませんが、計画を立てるときに考えておきたい点です。
| 変化 | 起きること | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 来店数の分散 | 同じお客様が複数の店を比べ、予約が分かれる | 1店あたりの来店数が減り、売上が下がる |
| 初回体験の価格競争 | 新規のお客様を集めるため、初回の料金を下げる店が出てくる | 初回の客単価が下がり、初回だけ利用して他店に移る人も増えやすくなる |
| 広告費の上昇 | 予約サイトや地図検索、SNS広告で、同じエリア・同じキーワードの広告枠を取り合う | 新規1人を集める費用(CPA)が上がりやすい |
| 稼働率の低下 | ブースの数はエリア全体で増えるのに、来店数はそれほど増えない | 空き枠が増え、家賃や人件費など固定費の負担が相対的に重くなる |
| 差別化の難しさ | 同じような設備・メニューの店が並ぶ | 料金以外で選ばれる理由を作らないと、価格競争に巻き込まれやすい |
試算:店が1店→2店→3店になったら(仮定)
以下は、食い合いの仕組みを説明するための仮定の数字です。実際のエリアの需要や、実在する店の数字を示すものではありません。自分の候補地の数字に置き換えて計算してください。
前提(仮定)
- あるエリアで、セルフホワイトニングの来店が月に合計300回あるとする(エリア全体の需要)
- 各店のブースは2台、1台あたり1日10枠、月25日営業として、月の受け入れ枠は2×10×25=500枠
- 1回あたりの客単価は3,000円、1回あたりの変動費(ジェル・消耗品など)は500円
- 家賃・人件費・広告費などの固定費は1店あたり月60万円
この前提では、1回あたりの利益(限界利益)は3,000円−500円=2,500円で、損益分岐点の来店数は60万円÷2,500円=月240回です。つまり、エリアの需要300回のうち80%を1店で取れて、やっと赤字にならない計算です。
需要が増えないまま店が増えた場合
| エリアの店の数 | 1店あたりの来店数 | 稼働率(500枠) | 1店あたりの売上 | 1店あたりの損益 |
|---|---|---|---|---|
| 1店 | 月300回 | 60% | 90万円 | +15万円 |
| 2店 | 月150回 | 30% | 45万円 | −22.5万円 |
| 3店 | 月100回 | 20% | 30万円 | −35万円 |
損益は「来店数×2,500円−60万円」で計算しています。来店がきれいに均等に分かれると仮定した単純な計算ですが、1店では黒字だったエリアでも、店が2店になると損益分岐点の240回を大きく下回ることがわかります。
店が増えて需要も少し増えた場合
店が増えることで認知が広がり、エリア全体の需要が増える場合も考えてみます。2店になったときに需要が20%増えて月360回、3店になったときに30%増えて月390回になると仮定します。
| エリアの店の数 | エリアの需要(仮定) | 1店あたりの来店数 | 稼働率 | 1店あたりの損益 |
|---|---|---|---|---|
| 2店 | 月360回 | 月180回 | 36% | −15万円 |
| 3店 | 月390回 | 月130回 | 26% | −27.5万円 |
需要が多少増えても、店の数の増え方に追いつかなければ、1店あたりの来店数は減ります。
価格競争と広告費の上昇が重なった場合
2店の状態で、初回の値下げなどで平均の客単価が3,000円から2,700円に下がり、広告費が月5万円増えて固定費が65万円になったと仮定します。1回あたりの利益は2,700円−500円=2,200円、損益分岐点は65万円÷2,200円=約296回に上がります。来店数が月150回のままなら、損益は150×2,200円−65万円=−32万円です。来店数が分かれるうえに、損益分岐点そのものが上がるのが、食い合いの重いところです。
損益分岐点の考え方と、固定費・変動費の分け方は損益分岐点の計算方法で詳しく解説しています。
出店候補地の飽和度を調べる方法
飽和しているかどうかは、感覚ではなく、同じ方法で数えて記録することで判断できます。地図検索や予約サイトで調べると、同じ駅の周りや同じ商業施設の中に、セルフホワイトニングを提供する店が複数並んでいるエリアもあれば、近くに1店もないエリアもあります。次の手順で、自分の候補地を調べてみてください。
- 範囲を決める:候補地を中心に、徒歩圏や、電車・車で通える範囲を決めます。半径500m・1km・2kmのように複数の範囲で数えると比べやすくなります。商圏の範囲の考え方は商圏分析のやり方で解説しています
- 地図検索で探す:地図アプリで候補地の周辺を表示し、「セルフホワイトニング」「ホワイトニング」などのキーワードで検索します。地図を少しずつ動かして、範囲の端まで漏れなく確認します
- 予約サイトで探す:美容系の予約サイトで、候補地の駅やエリアを指定し、「セルフホワイトニング」「ホワイトニング」で検索します。専門店だけでなく、メニューの一つとして提供している美容サロンも出てきます
- 歯科医院も確認する:範囲内の歯科医院のうち、ホワイトニングを案内しているところも、お客様から見れば比べる先になりえます。セルフホワイトニングとは別のサービスとして、区分を分けて記録します
- 表にまとめる:見つけた店を、下のような表に記録します。調べた日付も必ず書いておきます
| 記録する項目 | 見るところ |
|---|---|
| 候補地からの距離・道順 | 徒歩何分か、駅の同じ出口側か |
| 区分 | セルフホワイトニング専門店/メニューの一つとして提供するサロン/歯科医院 |
| ブース数(わかる範囲) | 店の案内や予約画面の枠の数から、受け入れ能力の目安をつかむ |
| 料金体系 | 初回・回数券・月額など、どの形で集客しているか |
| 営業時間・定休日 | 平日夜・休日に開いているか |
| 予約の取りやすさ | 平日・休日の空き枠の様子(日を変えて何度か見る) |
数えた店のブース数を合計し、範囲内の人口と並べてみると、候補地ごとの「混み具合」を同じ基準で比べられます。人口は総務省統計局が提供するjSTAT MAP(地図で見る統計)で、地図上の地点から半径を指定して調べられます。表は優劣をつけるためではなく、自分の計画の仮定(取れる来店数の割合)を決めるために使います。他店の口コミを転記したり、名指しで比べたりするのは避けましょう。
飽和のサイン
調べた結果から、次のような様子が見られたら、エリアの需要に比べて店や枠が多くなっている可能性があります。一つだけで判断せず、いくつ当てはまるかで考えてください。
- 同じ駅・同じ商業施設の中に、セルフホワイトニングを提供する店が複数ある
- どの店も、平日・休日を問わず予約の空き枠が多い
- 初回料金を大きく下げた案内や、期間限定の割引が目立つ
- 予約サイトの同じエリアの検索結果で、広告の掲載枠に同じサービスの店が並んでいる
- メニューの一つとしてセルフホワイトニングを始める美容サロンが周りで増えている
- 範囲内の人口に対して、合計のブース数が他の候補地より多い
反対に、店が複数あっても、どの店も予約が埋まりやすい場合は、需要に対して枠が足りていない可能性もあります。店の数だけでなく、空き枠の様子とセットで見ることが大切です。
FC本部の近隣出店(ドミナント出店)を確認する
フランチャイズに加盟して出店する場合は、他の店だけでなく、同じ本部の店が近くに出てくる可能性も確認が必要です。公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(平成14年公表、令和3年4月28日などに改正)には、次のような記載があります。
- 加盟者募集のときに開示が望ましい事項:本部が加盟者を募集する際に開示が的確に行われることが望ましい事項の一つとして、加盟後に加盟者の店舗の周辺の地域に、同一またはそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること、または他の加盟者に営業させること(ガイドラインではこれを「ドミナント出店」と呼んでいます)ができるかどうかに関する契約上の条項の有無と内容、そのような営業が実施される計画の有無と内容が挙げられています
- 配慮を示す場合:加盟者募集の際に、開業後のドミナント出店について配慮を行うと提示する場合には、配慮の内容を具体的に明らかにしたうえで取り決めに至るよう、十分留意する必要があるとされています
- 優越的地位の濫用にあたりうる例:ドミナント出店を行わないとの事前の取り決めがあるにもかかわらず、ドミナント出店が加盟者の損益の悪化を招く場合に、本部が取り決めに反してドミナント出店を行うことが、優越的地位の濫用にあたりうる例として挙げられています
- 予想売上の提示:本部が予想売上や予想収益を提示する場合は、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠のある事実や、合理的な算定方法に基づくことが必要とされています
これを踏まえて、加盟を検討するときは次の点を書面で確認しておきましょう。
- 契約書や開示書面に、近隣への出店(本部の直営店・他の加盟店)についての条項があるか。あれば、どの範囲で、どんな条件で出店しないのか(または出店できるのか)
- 候補地の周辺に、本部の出店計画があるか
- 「近くには出さない」「配慮する」と口頭で説明された場合、その内容が具体的に書面に書かれているか
- 提示された予想売上が、どんな店舗の実績と、どんな計算方法に基づくものか
この記事は加盟を勧めるものでも否定するものでもありません。契約条項の読み方はフランチャイズ契約の確認点でも解説しています。
飽和したエリアで出店するなら考えること
調べた結果、候補地がすでに混み合っているとわかっても、そこで出店する理由がある場合もあります。その場合は、次の点を試算と合わせて考えてください。
- 取れる来店数を低めに仮定しても採算が合うか:エリアの店の数で需要を割った来店数や、さらに低い数字でも損益分岐点を超えるか
- 固定費を小さくできるか:ブース数・家賃・人員を抑え、損益分岐点そのものを下げられるか
- 料金以外で選ばれる理由があるか:営業時間、予約の取りやすさ、説明の丁寧さ、通いやすい場所など、価格を下げずに選ばれる要素を具体的に挙げられるか
- 初回の値下げに頼らない集客ができるか:初回だけの価格競争に入ると、損益分岐点が上がることを試算で確かめておく
- 撤退の基準を決めておくか:何か月続けて来店数が一定を下回ったら見直すか、契約期間や解約の条件とあわせて決めておく
反対に、同じ方法で調べて、近くに同じサービスの店がないエリアが見つかることもあります。そうしたエリアは食い合いが起きにくい一方で、需要がまだ育っていない、人口が少ないといった別のリスクもあるため、需要の確かめ方とセットで検討することが大切です。空白エリアの見つけ方と需要の確かめ方は同業がいないエリアでの開業で解説しています。
よくある質問
Q. セルフホワイトニング業界は全体として飽和していますか?
A. 業界全体の店舗数を継続して集計した公的な統計は見当たらないため、一律には言えません。地域によって、同じ駅や商業施設に複数の店が並ぶエリアもあれば、近くに店がないエリアもあります。出店を考えているエリアで、店の数・ブース数・空き枠の様子を実際に調べて判断してください。
Q. 競合店が多いエリアは需要がある証拠ではないですか?
A. 需要があるエリアである可能性はあります。ただし、需要の増え方が店の増え方に追いつかなければ、1店あたりの来店数は減ります。競合が多い場合は、取れる来店数を低めに仮定しても損益分岐点を超えるかを試算して判断してください。
Q. 飽和しているかどうかは何で判断すればよいですか?
A. 範囲を決めて店を数え、ブース数・料金体系・営業時間・予約の空き状況を表にまとめ、範囲内の人口と並べて比べる方法が現実的です。初回料金の値下げが目立つ、どの店も空き枠が多い、といったサインがいくつ当てはまるかも参考になります。
Q. フランチャイズの場合、同じ本部の店が近くにできることはありますか?
A. 契約の内容によります。公正取引委員会のガイドラインは、加盟者の店舗の周辺に本部が同種の店舗を出すこと(ドミナント出店)ができるかどうかの条項と、出店計画の有無を、加盟者募集時に開示することが望ましい事項に挙げています。契約書と開示書面で、近隣出店についての条項と計画を確認してください。
開業準備の関連記事
参考資料
- 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」
- 公正取引委員会 報道発表資料「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」の改正(令和3年4月28日)
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「地図で見る統計(jSTAT MAP)」
執筆:ホワイトニング総研編集部(株式会社ピベルダ) 情報の確認日:2026年11月5日

